葬儀費用の仕組み

相続財産から控除できる葬儀費用

遺産を相続するときに支払う必要があるのが相続税です。相続する財産が大きいほど支払う相続税も多くなるため、少しでも課税額を減らして支払う税金を少なくしたいと思う人も多いのではないでしょうか。この点、葬儀費用は相続財産から控除可能です。葬儀費用は数百万単位でかかるため、控除額もある程度まとまった金額になります。そこで、今回は相続財産から控除できる葬儀費用について詳しく解説します。

遺産から支払える葬儀費用

葬儀費用は高額な費用がかかります。2017年に日本消費者協会が行ったアンケート調査によれば、全国の葬儀費用の平均は195.7万円です。約200万円もの大金が必要になるのが葬儀です。前もって用意しておくことに越したことはないですが、すべての人が約200万円もの大金をすぐに用意できるわけではありません。そこで、多くの人は故人の相続財産から葬儀費用を支払っています。土地や家、その他の相続財産があれば換価することで葬儀費用に充てることが可能です。故人から財産を相続する際には相続税が発生しますが、相続財産から支払う葬儀費用は相続税の課税対象から控除されます。これは、葬儀費用は故人のために行うものであり、社会一般的な感覚からして葬儀費用を相続財産から控除するのは相当だと考えられるからです。

もっとも、法的な観点からみれば相続財産とは故人が生前に保有していた財産や債権債務のことをいいます。葬儀費用はあくまでも故人が逝去した後に発生する債務なので、厳密にいえば相続財産に関する費用(民法885条)として相続財産から控除することはできません。しかし、葬式を行うことは社会通念上当たり前です。したがって、葬儀費用は故人の債務であると考えられており、相続財産から控除することが認められています。ただし、葬儀費用として相続財産から控除できる範囲は「被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるもの」とされています。例えば、葬儀を手伝ってくれた人への心付けは葬儀費用として控除可能ですが、数十万円~数百万円もの心付けは相当程度とは認められません。一般的な心付けの金額は2,000~5,000円程度、高くても数万円です。

具体的に葬儀費用として控除できるのは、「医師の死亡診断書」「通夜、告別式にかかった費用」「葬儀場までの交通費」「葬儀に関する飲食代(通夜、告別式)」などになります。何が葬儀費用に関する費用となるのかの判断基準は「葬儀をするにあたって通常必要な費用かどうか」という点です。例えば、通夜や告別式の参列者に対する接待費用としての飲食代や葬儀場までの交通費などは通常必要になる費用です。その他にも、「遺体の搬送費用」「火葬料・埋葬料」「葬儀を手伝ってくれた人への心付け」「僧侶の読経料・戒名料」なども含まれます。これらの費用は葬儀を行ううえで社会一般的に行われることであり、葬儀費用に関する費用として認められます。ちなみに、お手伝いさんへの心付けや惣領への読経料、戒名料などは領収書が出ませんが、日付と日時、金額などをメモしておけば葬儀費用として控除可能です。

一方、葬儀費用として控除できないのは「香典返し」「生花、お供え」「位牌、仏壇の購入費用」などになります。特に、香典返しには注意しましょう。香典は故人が受け取る金銭ではなく遺族が受け取るものです。したがって、香典返しとして支出する費用は葬儀費用に関する費用として計上することはできません。ただし、香典返しとは別に弔問客に対して渡すお礼の品は葬儀費用に含まれます。

遺産から葬儀費用が払える人・払えない人

葬儀費用の対象となるものによって控除できるかどうかが変わりますが、相続する人によっても変わります。葬儀費用の控除ができない相続人とは、「制限納税義務者」と「相続人及び包括受遺者以外の相続人」です。制限納税義務者とは、相続で国内財産を相続したときに、日本国内に住所を有していない人のことをいいます。納税義務者は大きく分けて「制限納税義務者」「無制限納税義務者」「特定納税義務者」の3種類があり、制限納税義務者は日本国内にある財産のみに相続税がかかる人のことをいいます。制限納税者に該当するのは、相続・遺贈が発生した時点から過去5年の間に日本国内に住所がない人です。制限納税者に該当する場合、相続税の課税対象から葬儀費用を控除することはできません。

一方、無制限納税義務者とは簡単にいえば日本国内に住居を持っている人のことをいいます。無制限納税義務者は「居住無制限納税義務者」と「非居住無制限納税義務者」の2種類に分けられます。居住無制限納税義務者とは、相続が発生した時点まで日本国内に住所を持ち生活をしている人です。日本国内で生活している以上、国内・国外の財産すべてに関して相続税が発生します。非居住無制限納税義務者とは、相続発生からさかのぼって過去5年以内に国内の住所がある人のことをいいます。相続時は外国に住んでいたとしても、相続発生から5年以内に日本に住んでいれば非居住制限納税義務者に該当します。

制限納税義務者と無制限納税義務者の違いは課税対象と住所の所在地です。制限納税義務者は国内に保有する財産だけが課税対象となり、国外の財産は対象となりません。一方、無制限納税義務者(居住無制限納税義務者と非居住無制限納税義務者)は国内・国外の財産が課税対象となります。住所に関しても、制限納税義務者は相続発生時点から5年以内に国内の住所がない人ですが、非居住無制限納税義務者は過去5年以内に住所がある人です。

葬儀費用が控除できるかどうかは自分がどのタイプになるのかによって異なります。無制限納税義務者の相続人、包括受遺者であれば葬儀費用の控除は可能です。一方、制限納税義務者の相続人、包括受遺者は葬式費用は控除対象にはなりません。また、無制限納税義務者であっても相続人及び包括受遺者以外の場合は控除対象にはならないので注意しましょう。

相続人及び包括受遺者以外の場合とは、特定受遺者に該当する場合などです。特定受遺者とは、遺言により特定の財産を遺贈された人のことをいいます。遺言での相続には財産を特定して相続させる方法と包括的に相続させる2つの方法があります。特定受遺者とは「A土地を遺贈する」「B有価証券を遺贈する」など、特定された財産を受け取る人のことです。法定相続人ではない特定受遺者は葬儀費用を負担する立場にはないため、特定受遺者が負担した葬儀費用は課税対象から控除することはできません。もっとも、負担付き遺贈で財産とともに引き継いだ債務がある場合や特定受遺者が法定相続人である場合は債務や葬儀費用を控除することができます。

 

誰が葬儀費用を負担するのか

ここまで葬儀費用を相続財産から控除できるかについて解説してきましたが、そもそも葬儀費用は誰が負担するべきものなのでしょうか。葬儀費用を誰がどのように負担するかについては、法律において特に定められておらず、一般常識や地域の慣習によって決められているのが現状です。一般的には、まず香典から葬儀費用を捻出し、払いきれない費用については相続財産から支払い、それでも足らない部分は喪主が負担することと考えられています。

葬儀費用を誰が負担するかという問題にはいくつかの考え方があり、「共同相続人の負担」「喪主の負担」「相続財産から出す」「地方ごとの慣習による」などが主な考え方です。これに対して、平成24年3月の名古屋高裁は、喪主の責任において決められた葬儀については喪主が葬儀費用を負担するのが当然という判旨を出しています。もちろん、これはあくまでも1つの個別的な判例であり、実際に誰が負担するかどうかはケースバイケースです。また、上記の判例でも以下の2つの場合を例外としています。

その例外とは、「故人が生前に自らの葬儀に関する契約をしていた場合」「相続人の間で葬儀費用の負担について合意がある場合」の2つです。まず、故人が生前に自らの葬儀に関して葬儀社と契約を結んでいた場合、契約者である故人の財産から支払われるのが妥当なので、喪主が負担する必要はありません。喪主が葬儀費用を一時的に立て替えた場合でも、その費用は相続財産から支払われることになります。

また、相続人同士の間で葬儀費用に関する合意が取り決められていた場合、その合意に従うことが優先されます。相続財産について各自の取り分を事前に決めておき、葬儀費用についても誰がどのように負担するかについて合意があれば、後々のトラブルを回避することが可能です。この取り決めをしていない場合、相続人の間で葬儀費用をめぐってトラブルが起こることもあります。故人が逝去後の遺産分割協議や遺産分割協定で葬儀費用は相続債務として扱うという合意が取れる場合もありますが、未然に争いを防ぐのであれば事前に合意を取り付けておきましょう。

合意を取るときのポイントは「誰がどのように負担するのか」「葬儀費用とは何を指すのか」まで合意しておくことです。葬儀費用といっても、さまざまな費用がかかります。特に、永代供養費用や法要費用はどうするのかなど細かい部分まで取り決めをしておきましょう。葬儀会場の費用や火葬費用、僧侶や寺へのお布施など葬儀の直接的な費用は葬儀費用に含まれますが、四十九日の法要が葬儀費用に含まれるかは明確に決まっていません。もし、相続人間での合意がないまま相続財産の中から法要費用を捻出したりすると、トラブルになる可能性もあるので注意が必要です。

また、香典に関しては、基本的に葬儀を執り行う喪主に贈られるものです。香典は葬儀費用に充てられることを目的としており、葬儀を主宰する喪主が受け取ることになります。もし、香典で葬儀費用の支払いがまかなわれ、余剰が出たとしてもその部分は喪主が使い道を決定できます。その他の相続人が分割請求することはできないので注意しましょう。

 

相続する財産が大きければ大きいほど相続税は多額になります。少しでも課税額を減らすためにも相続財産から控除できる葬儀費用をきちんと把握しておくことは非常に重要です。また、葬儀費用は誰が負担するのか、どこまでを葬儀費用とするのかなど相続人間で事前に協議しておくことも大切なポイントになります。故人をしっかりと見送ってあげるためにも、葬儀費用について知識をつけおきましょう。

心に残るお見送りをお手伝い
信頼の葬儀社

TOP
TOP
お急ぎの方はお電話ください。
0120-542-988 24時間
365日
無料
相談
※直接、葬儀社につながる電話番号ではありません