福井県では、お葬式で赤飯を食べる習慣のある地域があります。赤飯はおめでたいときに食べる食事という印象がありますが、もともとは凶事のときに食べる食事でした。それが慶事の食事に変ったのは江戸時代のことです。アジアでは古くから、「赤」という色が「祝い」を表すと同時に魔除けの力を持つとされていましたから、当時流行した疫病からの回復を願って赤飯を食べたのです。また、病気が治った後も赤飯が快気祝いとして食べられ、これが、慶事での食事として広まりました。赤飯は、「禍を転じさせるための縁起直し」の意味合いでお葬式に食べられたという説もあります。
福井県の一部では、お葬式のときに「御詠歌」を歌う風習があります。歌うのは、地域に根ざした「念仏講」などと呼ばれる団体の女性たちで、「念仏講」は仏教の信仰を目的として、在家の信者が念仏を唱える集団です。「御詠歌」は、仏教の教えを五・七・五・七・七の和歌にした優しく穏やかなメロディーの歌で、宗派によりさまざまなものがあります。宗派によっては、仏具の鈴(れい)や雅楽で使われる打楽器、鉦鼓(しょうこ)などで御詠歌を唱和することもあります。
福井県では、領北地方に浄土真宗が多く、領南地方に禅宗が多いという特徴があります。そのため、「出棺の際に故人の茶碗を割る」、「門火を焚く」、「棺に向かって米を撒く」といった、領北地方ではあまり見られない儀式が、領南地方では多くみられます。