納棺の際には、故人の愛用品や好きだったものを入れることがありますが、徳島県では、副葬品としてハサミと針と糸を入れる風習があります。別の県でもハサミを入れるところがあり、そちらは、かつて湯灌の際、女性の髪を切っていた名残として髪を切らなくなった現代でもハサミを入れるというのが理由です。しかし、徳島では、故人があの世で使う裁縫道具として、ハサミと針と糸が入れられているといいます。
徳島県では、近親者が通夜に訪れる際、香典とは別に「通夜見舞い」としてお菓子や酒を持参するしきたりがあります。通夜の後には、親しい人を中心とした弔問客に食事などを振る舞う「通夜振舞い」のならわしがありますが、徳島県ではこの通夜振舞いに「きつねうどん」を出すことが定番となっています。うどんで有名な隣県の香川ではなく徳島でのならわしというのは不思議ですが、うどんは、作るのにも片付けるのにも手間がかからなことから、喪家の負担にならない通夜振舞いとして定着したようです。
徳島県の郡部など一部地域では、かつての「野辺送り」の名残りとして、出棺場所から霊柩車までのごく短い距離であっても、葬列を組むことがあります。また、棺を乗せた霊柩車が徐行運転でゆっくりと進み、遺族や親近者がその後ろに葬列を組んで一区画分だけ行列する場合もあります。火葬場から戻ってお清めの塩を使う際には、竹で作った小さな馬をまたいでから家に入るしきたりもあります。
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